幾つ目かの駅で停車した時に、外国の女の子が一人乗車して来た。
ヨーロッパ圏(東欧)出身の留学生かな。
高く、ツンとした鼻で均整の取れた無駄のない顔立ち。
色は白く痩せているが潤いに溢れた肌は健康的で顔と同じ様に無駄が無い。
とりわけ派手とか個性的で人目を引くという訳ではないけれど、自分の事をよく判った上で選択された彼女のファッションは、彼女をよく引き立たせ、とてもお洒落だったようだ。
彼女は向かいのドアの脇に立って音楽を聴きながら流れる景色を眺めていた。
彼はいろいろと気にかかったみたいだが、目線を下げた。
そこから数駅。
彼の座席側のドアが開くと、彼女は下車しようと動き出し、彼の横を過ぎる。
その動きを察知した彼の動きが一瞬止まる。
と、同時に彼の読む本に紙切れが挟まれた。
ん?
彼女は何もなかったかの様に下車し、階段を目指し小気味よく歩いていく。
それらの動作が流れる様にスマートであった為、事態が飲み込めない彼は、彼女がその紙を落としたのかとも思った。
だが、確実に彼女の手は本の間際まで来ていたのだ。
彼は、手で千切られたその紙片を手にし、裏を返す。
You are beautiful.
電車が大きな音をたて、揺れた。

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あなたはかわいい。